前回まで,離婚について集中してお話ししてきましたが,
離婚についての話をいったん締めくくるにあたり,
調停での合意や離婚の裁判が成立した後の執行について,
簡単にお話ししておきたいと思います。
調停手続で合意が成立し,調停調書が作成された場合も,
あるいは離婚裁判や各種審判で判決・審判が下された場合も,
調停調書や判決書・審判書に記載された義務の存在が,
裁判所が関与する形で認められただけのことであり,
その義務を履行するかどうかは義務者に委ねられます。
多くの場合,判決等で義務が明らかになった場合には,
そのとおりに義務を履行する義務者が多いのですが,
もし義務者が自分から義務を履行しようとしない場合には,
義務の履行を促したり,強制的に義務を履行させたり,
といった手段を採る必要が生じることになります。
まず,家庭裁判所の手続で決まった義務については,
家庭裁判所に申立てを行うことで,
義務者に対して履行勧告をしてもらうことができます。
ただ,これには強制力がありませんので,
義務者が勧告を無視すれば意味がありません。
次に,裁判上認められた義務については,
強制執行が認められることがあります。
強制執行ができるかどうかやその方法は,
義務の性質等によって異なるのですが,
例えば養育費や婚姻費用の支払義務については,
義務者の財産を差し押さえて強制的に義務の履行を受ける,
という直接強制の方法による強制執行が可能です。
差し押さえる財産にはいろいろありますが,
義務者がお勤めの方であれば,給与の差押えというのが,
最も確実な方法ということになるでしょう。
この他,義務者が北千住の高級マンションに住んでいて,
義務を履行するに足りる財産を十分有しているのに,
義務の履行をしないというような場合については,
債務の額にもよりますが,このマンションを差し押さえ,
換金して債務を履行してもらうということもあります。
なお,義務者の財産を差し押さえるということなので,
義務者に差押えできるような財産が何もない場合は,
強制執行しても無意味ということになります。
他方,面会交流の義務については,
義務の性質上,直接強制の手段は採り得ず,
義務を履行しない場合は一定額の間接強制金の支払を命じ,
間接強制金の支払をしたくないのならば義務を履行せよ,
という形の強制執行(間接強制)をすることになります。
ただ,間接強制金を支払うだけの財産がない義務者には,
間接強制はほとんど意味がありません。
この他にも,ハードなものとしては子の引渡しの直接強制など
強制執行にも様々な類型のものがあります。
家庭裁判所の手続で義務が定まったのに履行してもらえない,
という場合には,これら手段を検討しましょう。
当事務所では,履行勧告や強制執行についても,
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