別居後に決めなければならないこととして,
今回は,⑥親権・監護権をどちらが担うか,
についてお話しします。
わが国では,婚姻中の夫婦の間の子は,
夫婦が共同して親権を行使することになっていますが,
その夫婦が離婚した場合,共同の親権行使はできず,
夫婦のいずれか一方のみが親権を持つことになります。
そこで,どちらが親権を委ねられるべきか,ということが,
離婚に際して大きな問題となってきます。
また,監護権とは,子どもの現実の監護をする権利,
もっと簡単に言えば日々の面倒を見る権利のことであり,
本来は親権に含まれるものなのですが,
離婚前の別居状態でどちらが監護をすべきか,
という場面では,親権とは切り離されて問題になります。
例えば,夫婦が元々住んでいた船橋の自宅で夫が生活し,
妻が北千住の実家で生活しているという場合,
そのどちらが子どもの監護をするか,ということです。
もっとも,別居時に監護権をどちらに委ねるかという問題は,
離婚後に親権をどちらに委ねるかという問題と同じですから,
基本的には親権と同じものと考えてよいです。
親権を夫婦のどちらに委ねるかは,
何より子の福祉,すなわち子どもにとって最善の選択,
という観点から決定されます。
具体的には,おおむね次の8点を考慮して決定されます。
①これまでの監護実績及び現在の監護状況
②子自身の意思の如何
③母性優先
④面接交渉等,裁判所の指示に従うか
⑤兄弟不分離
⑥奪取の違法性の有無
⑦夫婦双方の監護能力の高低
⑧夫婦双方の経済的能力の高低
まず,①これまでの監護実績及び現在の監護状況は,
これまで及び現在の監護の状況を考慮して,
監護実績がある者にそのまま子の親権を委ねよう,
という方向で考慮されます。
すなわち,育児にほとんどかかわっていなかった者が,
急に子の親権がほしいと言い出しても不利になります。
②子自身の意思の如何は,おおむね10歳以上の子であれば,
子自身の意思が相当大きな要素として考慮されます。
これに対し,それ以下の年齢,特に就学前の幼児については,
子自身の意思はそれほど考慮されません。
③は,母性的存在が子の生育に重要な影響を与えることから,
年齢が低い子ほど母親が優先されるというものです。
ただし,母親でなければ母性的存在になれないわけではなく,
絶対的に母親が優先するというものではありません。
④面接交渉等,裁判所の指示に従うか,は,
離婚に際する交渉の過程で,面会交流の円滑な実施等,
子の福祉のために必要な指示を裁判所が行った場合に,
これに従う親を優先的に親権者にするというものです。
⑤兄弟不分離は,子が複数いる場合,
その複数の子はなるべく分離せず一方の親に親権を委ねる,
ということです。
⑥奪取の違法性の有無は,子の監護の開始に際して,
子をその意思に反して奪い去るような行為があれば,
それを振りに考慮すると言うことです。
⑦夫婦双方の監護能力の高低は,①とも関連しますが,
親権が帰属すべき親自身の監護能力に加えて,
親に協力して子の監護に携わる看護補助者,
例えば祖父母などの監護能力の程度や関与度合い等も,
監護能力の考慮要素となります。
最後に,⑧夫婦双方の経済的能力の高低は,
子の監護の基盤となる経済力があるか否かを考慮しますが,
養育費の支払を受けることでクリアできる問題なので,
あまり重要な考慮要素にはなりません。
以上の事情を総合して,親権の帰属が決定されます。
ただ,両親が離婚するということだけでも,
子どもは少なからぬ影響を受け,傷ついています。
②の子の意思を確認するようなことになれば,
いっそうその傷は深くなってしまいます。
できればそんなことにならないよう,
話し合いで解決するよう努めてほしいところです。
親権に関しては,なるべく早めに相談していただければ,
その分だけ有利な要素を増やしていくことができます。
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