前々回のブログで,夫の暴力から逃れたい場合等には,
まずは行動の自由の確保を最優先してほしい,
という話をしました。
ただ,運良く夫の下から逃れて行動の自由を確保できても,
夫に見つかってまた暴力を振るわれたら意味がありません。
では,夫の暴力から逃れ続けるにはどうしたらよいか。
例として,結婚して船橋市内で生活していたものの,
夫の暴力に耐えかねた妻が,夫の出勤中に家を逃れ出て,
着の身着のまま北千住の実家に駆け込んだ,
という設例を前提に,お話ししていきたいと思います。
設例の場合,逃げ込んだ先が北千住の実家であること,
及び夫が住んでいるのが船橋であることから,
妻の逃げ場所として疑われ,実家に乗り込まれたり,
そこまで行かなくても実家の周りをうろつかれたり,
ということが十分想定されます。
このような状態を阻止するための有力な手段が,
DV防止法の定める接近禁止命令等の制度です。
接近禁止命令は,上記設例の妻の場合であれば,
妻の住居その他の場所での妻に対する付きまといや,
妻の住居,勤務先等妻が通常所在する場所の近辺をうろつく,
といった行為を夫がすることを禁ずるものです。
命令に違反すれば,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
というかなり厳しい刑事罰が規定されていますので,
夫がそれなりに地位のある社会人であれば,
接近禁止命令の効果は絶大です。
また,接近禁止命令は,上記した付きまとい行為のほか,
必要に応じて,面会強要,電話,メール等の禁止の禁止も
併せて請求することができます。
さらに,妻との接近は禁止してもらっても,
実家のご両親の勤務先に押し掛けて迷惑をかける危険がある,
といった場合には,親族等への接近禁止も可能です。
加えて,例えば上記設例で,妻が子を伴って実家に帰ったが,
夫が子を取り戻そうとしているというような場合については,
子への接近禁止をしてもらうことも可能です。
ただし,裁判所が接近禁止命令を出すための要件は,
①暴行罪・傷害罪に当たるような暴行を受けたことがある
or生命・身体に害を加えるという脅迫を受けたことがある
②今後,配偶者からの身体に対する暴力により
その生命身体に危害を受けるおそれが大きい
という比較的厳格なものです。
夫の行動の自由を大幅に制約しかねない命令である以上,
ある程度厳格な要件があるのはやむを得ないところでしょう。
ですから,酷い暴言を浴びせられたが暴行まではないとか,
別居した後にさらに暴力を振るわれるおそれはないとか,
そういう場合には接近禁止命令は出ません。
また,仮に暴行があっても,そのことの証拠がなければ,
接近禁止命令を得ることは困難になるかもしれません。
夫が暴行を否定してきたら,証拠がどうしても必要です。
ですから,逃げ出した先で夫からの干渉を避けたいならば,
弁護士に法律相談に行くのも大切ですが,
それより何より,殴られたアザ等の写真を撮っておき,
可能であれば医師の診察を受けて診断書を書いてもらう,
といった証拠確保をしておく必要があるのです。
そして,さしあたっての証拠確保が終わったら,
弁護士に法律相談に行きましょう。
接近禁止命令の申立てを本人自身でするにせよ,
弁護士に依頼するにせよ,アドバイスを受けて行動すれば,
失敗も少なくなります。
当事務所の法律相談は初回60分無料,
夫の勤務中の昼間に相談したいとか,
夫が自宅に戻った後の深夜に相談したいとか,
土日・夜間を含むあらゆる時間帯の相談に対応します。
実家の両親と一緒に話を聞きたいとか,
外出して夫に見つかりたくないという場合ならば,
ご指定の場所に出向くこともできますので,
電話かメールでご連絡ください。