事務所ブログ

2014.08.06更新

前々回のブログで,夫の暴力から逃れたい場合等には,
まずは行動の自由の確保を最優先してほしい,
という話をしました。

ただ,運良く夫の下から逃れて行動の自由を確保できても,
夫に見つかってまた暴力を振るわれたら意味がありません。
では,夫の暴力から逃れ続けるにはどうしたらよいか。
例として,結婚して船橋市内で生活していたものの,
夫の暴力に耐えかねた妻が,夫の出勤中に家を逃れ出て,
着の身着のまま北千住の実家に駆け込んだ,
という設例を前提に,お話ししていきたいと思います。

設例の場合,逃げ込んだ先が北千住の実家であること,
及び夫が住んでいるのが船橋であることから,
妻の逃げ場所として疑われ,実家に乗り込まれたり,
そこまで行かなくても実家の周りをうろつかれたり,
ということが十分想定されます。
このような状態を阻止するための有力な手段が,
DV防止法の定める接近禁止命令等の制度です。

接近禁止命令は,上記設例の妻の場合であれば,
妻の住居その他の場所での妻に対する付きまといや,
妻の住居,勤務先等妻が通常所在する場所の近辺をうろつく,
といった行為を夫がすることを禁ずるものです。
命令に違反すれば,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
というかなり厳しい刑事罰が規定されていますので,
夫がそれなりに地位のある社会人であれば,
接近禁止命令の効果は絶大です。

また,接近禁止命令は,上記した付きまとい行為のほか,
必要に応じて,面会強要,電話,メール等の禁止の禁止も
併せて請求することができます。

さらに,妻との接近は禁止してもらっても,
実家のご両親の勤務先に押し掛けて迷惑をかける危険がある,
といった場合には,親族等への接近禁止も可能です。

加えて,例えば上記設例で,妻が子を伴って実家に帰ったが,
夫が子を取り戻そうとしているというような場合については,
子への接近禁止をしてもらうことも可能です。

ただし,裁判所が接近禁止命令を出すための要件は,
①暴行罪・傷害罪に当たるような暴行を受けたことがある
 or生命・身体に害を加えるという脅迫を受けたことがある
②今後,配偶者からの身体に対する暴力により
 その生命身体に危害を受けるおそれが大きい
という比較的厳格なものです。
夫の行動の自由を大幅に制約しかねない命令である以上,
ある程度厳格な要件があるのはやむを得ないところでしょう。
ですから,酷い暴言を浴びせられたが暴行まではないとか,
別居した後にさらに暴力を振るわれるおそれはないとか,
そういう場合には接近禁止命令は出ません。
また,仮に暴行があっても,そのことの証拠がなければ,
接近禁止命令を得ることは困難になるかもしれません。
夫が暴行を否定してきたら,証拠がどうしても必要です。

ですから,逃げ出した先で夫からの干渉を避けたいならば,
弁護士に法律相談に行くのも大切ですが,
それより何より,殴られたアザ等の写真を撮っておき,
可能であれば医師の診察を受けて診断書を書いてもらう,
といった証拠確保をしておく必要があるのです。

そして,さしあたっての証拠確保が終わったら,
弁護士に法律相談に行きましょう。
接近禁止命令の申立てを本人自身でするにせよ,
弁護士に依頼するにせよ,アドバイスを受けて行動すれば,
失敗も少なくなります。
当事務所の法律相談は初回60分無料,
夫の勤務中の昼間に相談したいとか,
夫が自宅に戻った後の深夜に相談したいとか,
土日・夜間を含むあらゆる時間帯の相談に対応します。
実家の両親と一緒に話を聞きたいとか,
外出して夫に見つかりたくないという場合ならば,
ご指定の場所に出向くこともできますので,
電話かメールでご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所