事務所ブログ

2014.07.19更新

昨日は,平成26年7月17日の最高裁の判断について,
子の視点からの影響を分析をしました。
その中で,夫の嫡出推定(民法772条)が及ぶ状況では
子どもを産まないようにすべき,ということを書きましたが,
これは親の側がすべきことですね。お詫びして訂正します。
後ほどお話しするとおり,血縁上の父の協力が得られれば,
血縁上の父と子を養子縁組することもできますが,
これは母や血縁上の父が主導して行う手段であり,
子の側で積極的にできるという手段ではありません。
となれば,子の側から血縁上の父を法的にも父とする手段は,
全くないということになります。

では,母や血縁上の父に何かできることはないのでしょうか。
昨日の設例と同様,夫Aと結婚して広島市内に住んでいたBは,
Aの家庭内暴力に苦しみ,元同級生のC(男性)に相談を持ちかけました。
Cは親身になって相談に乗り,適切なアドバイスをしてくれたため,
BはAと別居することができ,実家近くの北千住で生活を始めました。
その後,BはCと親密な関係になり,Cとの間に子Dが誕生しました。
という事案を用いて,説明していきましょう。

BがAと離婚し,かつ,離婚の300日後以降にDを産んだ場合,
Aの嫡出推定は及ばず,AがDの法的な父となることはありません。
この場合,Dは,BとCが結婚すればBC間の嫡出子になりますし,
仮に結婚しなくても,認知があればCが法的な父になります。

これに対し,Aの嫡出推定が及ぶ状態でDを産んだ場合,
Aが1年以内に嫡出否認の訴え(民法775条)を提起して,
これが認められない限り,Dの法的な父はAであり,
BやCの側からその関係を消すことは認められません。
仮にDNA鑑定でAD間の親子関係の不存在が明らかでも,
父子関係は否定されないというのが本件判断だからです。

そして,D出生後にBがAと離婚しても状況は変わりません。
それどころか,離婚してBがDの親権を得たとしても,
Bが戸籍の筆頭者となっている場合でなければ,
DはAの戸籍に残ってしまい,Bの戸籍には移りません。
さらに,その後BがCと結婚したとしても,
Cの戸籍に入るのはBだけで,DはAの戸籍に入ったままです。

こうした戸籍の状況を避ける手段はいくつかありますが,
その1つが,CとDとの養子縁組という手段です。
CとDが養子縁組すれば,養子Dは養親Cの戸籍に入り,
Aの戸籍から除籍されます。
ただし,Aとの間の父子関係が消えることはありません。

なお,最高裁は,子の地位の安定という観点を強調しますが,
法的な父子関係は父の子に対する扶養義務を基礎づけると同時に,
子の父に対する扶養義務をも基礎づけるという意味を持ちます。
すなわち,上記設例で,DがもっぱらBとCに扶養され,
一切Aからの扶養を受けずに成長していったとしても,
年老いたAに扶養の必要が生じれば,Dが扶養しなければなりません。
生活保護への世間の目が厳しくなる一方の昨今では,
DがAの扶養を免れることは困難でしょう。

結局,本件判断の下でB・Cが採り得る最善の選択肢は,
Bが早期にAと離婚し,Aの嫡出推定が及ぶ状況で子どもを産まない,
ということに尽きることになります。

次回は,法的な父,上記設例でいうAの立場から,
本件判断の影響を検討してみたいと思います。
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投稿者: 豊和法律事務所