事務所ブログ

2014.07.18更新

平成26年7月17日,最高裁判所は,
DNA鑑定等で生物学的な父子関係の不存在が証明された場合でも,
親子関係不存在確認の訴えによって父子関係を否定することはできない,
という判断を示しました(以下,本件判断といいます)。
結論・理由づけともに問題がある部分が多々ある本件判断ですが,
今後の実務は本件判断に従って動いていくことになります。
そこで,本件判断によって家事事件の関係者がどのような影響を受けるか,
検討してみましょう。

まず,父子関係の下で父親の監護・養育を受ける子から見た影響です。
最高裁は,子の法的地位の安定を,本件判断の主たる理由としており,
本件判断の下では,仮にDNA鑑定等で生物学的な父子関係が否定されても,
そのことを理由に法的な父子関係の不存在を主張され,
監護・養育の利益や相続権などを失うおそれはなくなります。
ただ,法的な父子関係を否定できないということは
その反面,血縁上の父を法的な父とする余地もないことを意味します。

例えば,こういう事案を想定してみましょう。
夫Aと結婚して広島市内に住んでいたBは,
Aの家庭内暴力に苦しみ,元同級生のC(男性)に相談を持ちかけました。
Cは親身になって相談に乗り,適切なアドバイスをしてくれたため,
BはAと別居することができ,実家近くの北千住で生活を始めました。
その後,BはCと親密な関係になり,Cとの間に子Dが誕生しました。

この場合,BとAとの間の離婚が成立していなければ,
Dの法的な父はAになります(民法772条1項)。
それどころか,Aとの離婚後300日以内でも,
同じ結論が導かれてしまいます(民法772条2項)。
Aが嫡出否認の訴え(民法774条)を提起しない限り,
Dの法的な父は永久にAのままということになります。
後にBがAと離婚し,Cと再婚して,Dと家庭生活を営んでいても,
CがDの法的な父となることはありません。
Dが,Aとの親子関係の不存在確認の訴えを提起し,
DNA鑑定でAとの間の父子関係の不存在を証明したとしても,
法的な父子関係は否定されないというのが本件判断の帰結です。
したがって,Dは,血縁上の父であるCに扶養を求めることができず,
Cの法定相続人となることもできません。

最高裁としては,Aとの間で父子関係が認められるのだからよい,
と考えているのかもしれませんが,
血縁上の父子関係が存しないAにDの扶養を委ねてよいのか,
委ねたところで実効性がどれほどあるのか,
非常に疑問が残るところです。

本件判断の妥当性の有無はともかく,これを前提とするならば,
Dの扶養等は法的な父であるAに委ねざるを得なくなります。
こうした事態を避けたいのであれば,Bとしては,
Aとの離婚成立後300日以内には絶対に子どもを産まない,
という選択をしなければなりません。

今回,本件判断について,子から見た影響を検討してみました。
次回以降,他の関係者から見た影響についても検討していく予定です。
なお,本件に関係する悩みをお持ちの方は,
一人で抱え込まずに,当事務所の無料法律相談をご利用下さい。
土日や夜間も相談に対応しておりますし,
夫が居場所を探し回っている等の事情で外出が難しいようならば,
ご指定いただいた場所に出向かせていただきます。

投稿者: 豊和法律事務所